郷に入っては郷に従え?
「郷に入っては郷に従え」
風俗や習慣はその土地によって違うから、新しい土地に来たら、その土地の風俗や習慣に従うべきだということを意味することわざだ。日本にいる時は大して気にも留めていなかったこのことわざだが、私の心に引っかかるようになったのは昨年の秋に韓国留学に来た時からだ。
韓国の地下鉄やバスなどの公共交通機関では、携帯電話で通話している人をしばし見かける。日本では禁止とされている公共交通機関での携帯電話での通話は、韓国では社会的に許容されているため、誰も他を意識せずに通話をしているようだ。「公共交通機関では通話を控えなければならない」と学んできた日本育ちの私には、どうしても韓国のこの文化に無意識的に違和感を抱いてしまう。
私が韓国の文化に対して違和感を抱いている一方で、日本の風俗や習慣のせいで韓国人の友人に違和感を抱かせてしまった経験も少なくはない。日本では食事をする際、器を手に取り箸を使ってご飯を食べるのが基本だ。しかし韓国では器を手に取って食べることはマナーが悪いとされテーブルに置いたまま食べる。箸を使ってご飯を食べたり汁物を飲んだりすることも失礼に当たる行為だと言う。私が韓国の文化に対して抱いた違和感を、今度は友人が日本の文化に対して抱いたようだ。
自身が持つ風俗や習慣とは別のものに出会ったとき、果たしてその文化に必ずしも適応しなくてはならないのだろうか。たとえ自身が持つ風俗や習慣が少数派となる土地へ来たとしても、私なりのやり方を突き通してはいけないのだろうか。そんな考えを巡らせながら、この国では少数派となる私は今日も韓国の風俗や習慣を学んでいく。
箸とスプーンを縦向きに並べる韓国の食事マナー