コロナと地元の飲食店
東京から遠く離れた私の実家の近くには、かつて「キリシュナ」という、南インド料理屋があった。2013年に私の町内に移転してきたのだが、当時から本格的な南インド料理が味わえると評判の店だった。
シェフは、タミル出身のエドワードさん。家族でインドからこっちに引っ越してきたという。
「もう一度あのビリヤニが食べたい」と思いながらなかなか行けず、
都心のコロナの影響から実家に逃げ込んできたときにはもう、閉店してしまっていた。
その後、エドワードさん一家は8月にインドへ戻る予定だったらしいが、それも叶わなかったという。これはエドワードさんの家族と関わりのある、私の両親を通じて伺った話だ。
しばらくしてから2度目の緊急事態宣言が発布され、対象外であるが地元でも緊張感が増してきた。「コロナは東京のものだと思っていたが、すぐ隣にいるかもしれないと思うようになってきた。」と地元ニュースでインタビューを受ける年配の方が言う。私はエドワードさん一家はちゃんと生活できているのだろうか、と心配になっていた。これも両親を通じて伺ったが、最近はアルバイトをしているらしい。今年の某月にインドに帰れるよう、準備を整えているという。
飲食業はますます苦境に立たされている。その中でも、エドワードさんのように飲食店に携わる外国人は数多い。日本で故郷の味を広めようと活躍していた外国人がその機会を失い、自国にも帰れない状況が続いているのは心苦しい状況だ。
「食」は人間の生活に欠かせないもの。だからこそ、そこにはそれぞれの文化の特色が、わかりやすく反映される。以前のように、「食」を通じて異文化交流が気軽にてきる世が待ち遠しいものだ。