通〜ぶりズム

街を通ぶって歩く、通〜ぶりストたちによるブログです

「新しい文化」を食べてみる

 韓国にはチャジャンミョン(漢字表記:炸醬麵、ハングル:짜장면)という麺料理がある。韓国でチャジャンミョンと言えば中華料理に分類され、どの中華料理屋さんに入っても必ずあるメニューと言ってもいいほど定番の中華料理として有名だ。このように韓国で広く中華料理としての認識が強いチャジャンミョンだが、実際には一般的に知られている中華料理のジャージャー麵とは区別される。

 

 

 チャジャンミョンは、チュンジャンと呼ばれる黒味噌を油で炒め、その油で野菜やお肉を炒めた後、片栗粉を水で溶いて絡め麺に乗せた料理だ。1883年に仁川港が開港されると、多くの山東半島の労働者たちが韓国にやって来て、彼らが故郷で食べていたジャージャー麵を夜食として韓国でも再現して食べるようになった。そんな中、仁川にチャイナタウンが成り立つと共に韓国に定住した華僑は、自分たちが故郷で食べていたジャージャー麵に野菜やお肉を入れ、韓国人の好みに合うものを作り上げた。油気を減らし、塩辛い味付けのジャージャー麵とは異なり甘い味付けをすることで、韓国人の口に合う現在のチャジャンミョンが誕生した。

 

 

 これと似た事例として、日本の長崎ちゃんぽんが挙げられる。明治中期、長崎市に現存する中華料理店の初代店主が、当時日本に訪れていた食べ盛りの中国人留学生に、安くて栄養たっぷりな料理をと考え作ったのがちゃんぽんの始まりであり、たちまち長崎の中華街に広まっていった。ちゃんぽんのルーツは福建省の湯肉絲麺(とんにいしいめん)である。湯肉絲麺は麺を主体として豚肉、椎茸、タケノコ、ネギなどを入れたあっさりとしたスープだが、中華料理店の店主がこれにボリュームをつけて濃いめのスープ、豊富な具、独自のコシのある麺を日本風にアレンジしたものが、現在日本人に多く好まれている長崎ちゃんぽんだ。

 

 

 韓国のチャジャンミョン、日本の長崎ちゃんぽん、この二つの料理に共通する点は、もとは他の国や文化の料理が、現地の人々の好みに合わせアレンジされ誕生した料理、つまりローカライズされた料理であるという点だ。わたしたちが普段何気なく食べているその料理も、ルーツをたどればわたしたちの好みに合わせてローカライズされ、新たに生まれたものかもしれない。交流が途絶えられたコロナ禍のいま、わたしたちは「食」を通じることで異文化交流を行うことができるのではないだろうか。文化と文化が出会い誕生した「新しい文化」を食べてみることで。

 

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仁川チャイナタウンで食べたチャジャンミョン

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チャジャンミョン博物館にある卒業式にチャジャンミョンを食べる人の模型