通〜ぶりズム

街を通ぶって歩く、通〜ぶりストたちによるブログです

言語の壁の向こう側

新型コロナウイルスが中国で流行り始めた2020年の2月、私は友人たちとヨーロッパ周遊旅行へ赴いた。旅行の7日目、イタリアのフィレンツェに到着し、エアビーで予約した街中のアパートに向かった。

私たちは予定されていた時間より少し早く着いたが、お構いなしに宿のドアを開けると、部屋の中で私たちと同い年くらいのイタリア人女性が清掃作業を行なっていた。

私は「チャオ!」と挨拶し、「私達はこの部屋のゲストで、チェックインしに来ました!」と英語で伝えた。すると彼女は私の目を見ながら戸惑いの表情を見せ、何かを言いたそうに口をモゴモゴさせていた。

少し気まずさを感じた私は様々な事を英語で質問したが、彼女は無言のままニコニコするだけで、英語を全く理解していないようだった。当然ながら私も全くイタリア語を話せない。つまり私達は、お互い共通に理解できる言語がないという状況に陥ったのだ。

そこからは、まだ清掃作業中である事や、チェックアウト時は、鍵をポストに入れる事、清掃作業が終わる前に、荷物を置いて外へ観光に出掛けたい事など、互いに伝えたい事をジェスチャーや表情だけで、伝え合い、私達はその宿を後にした。

この言葉を一切使わず、心を通じ合せる体験の中で、私は彼女に強い好感を持っていた。私達は互いの言葉を全く理解出来ないという途方もないほどの言語の壁にぶつかっていたが、互いに自分の言葉を捨てる事で、より一つになり、互いの事を深く理解出来た気がした。

言語に限らず、世界には様々な壁や境界線があり、人々を分け隔てているが、その壁を全て取っ払う事ができれば、世界はもっと平和になるんじゃないかとふと思った。f:id:tuuburism:20210820211824j:plain