通〜ぶりズム

街を通ぶって歩く、通〜ぶりストたちによるブログです

労働者に求められる「当たり前」

採用選考は無いのに、働くことを拒絶される。

それを私は目の当たりにしてしまった。

 

私は、とある人材派遣サービスの登録会に参加していた。

業務内容は倉庫内での軽作業。履歴書不要で面接も無く、働きたい時にすぐに働けるという好条件のアルバイトだ。

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軽作業のイメージ画像。検品、梱包作業、発送作業、ピッキング作業などを行う。 (引用元:https://www.illust-box.jp/sozai/180746/)

登録会は、雇用契約書の記入から始まった。

進行役の社員は、参加者の反応を確認することなく記入方法を早口で説明していく。ほぼ毎日開催されている登録会にすっかり慣れてしまっているようだ。

「説明が早すぎる」

そう思って顔を上げると、私の向かい側の席に座っている女の子があたふたしている様子が目に入った。彼女の横では、女の子より少し年上らしい男性(兄?)が、一緒に書類を整理しながら何か話しかけている。聞き馴染みのない発音、話し方だった。

2人の様子に気付いた社員は一旦説明を止め、しばらく彼らと何かを話した。そして最後に冷たくこう言い放った。

 

「1人で意思疎通が取れないのであれば、業務に参加することは出来ません。」

 

男性が女の子に話していた言葉は、日本語では無かった。おそらく目の前の女の子は、日本語の聞き取りが苦手なのだろう。そしてたった今、「サポートが無ければ日本語での意思疎通が難しい」というだけで、労働の機会を失った。「選考無し」なのに。

日本国籍以外の者でも在留カードさえあれば登録出来るとされているし、採用条件に「日本語が自由に使えること」なんて言葉は全く書いていなかった。

日本語での意思疎通が出来ないのは、人材派遣としては何かと面倒だから。そんな理由で断られたのだろう。

 

日本で働くなら日本語は自由に使えるはず。

果たしてこれを「当たり前」だと言い切って良いのだろうか。

 

そもそも倉庫での軽作業は、コミュニケーションの少ない単純作業であることが多い。作業内容を正確に理解することが出来れば、誰でも出来る仕事であるはずなのだ。

「日本語で伝えられる作業内容を理解する」という壁さえ乗り越えられれば。

その壁を自力で乗り越えられない者は労働すべきでないと言われてしまえば、彼らにもう居場所はない。

雇う側がその壁を取っ払うことは出来なかったのだろうか。

 

この場を去る2人の後ろ姿は、とても寂しそうに見えた。