通〜ぶりズム

街を通ぶって歩く、通〜ぶりストたちによるブログです

ふるさとの糸 飛鷹

 1人歩きする18時の高円寺は肩身が狭い。純情商店街は魚屋の親父の叩き売りの声が響き、仲町商店街は仕事仲間と飲み屋を探す人々が川のように流れている。目的も連れもない私は孤独を感じながら薄暗い高円寺ストリートに逃げついた。

 『祭り太鼓』という和的な看板にそぐわず、ネパール料理やワールドビールが目を引くアジアンダイニング。入ると浅黒い肌の、彫りが深い顔立ちをした店員が出迎えた。ビールとチキンセクワ(ネパールの焼鳥)を頼みつつ、言葉を交わしているうちに店員がネパール人留学生であり普段は違う居酒屋で働いていること、今週は店長が帰国したためヘルプでこの店に来ていることを知る。彼によると新しいネパール料理屋ができるとすぐに訪ね、連絡先を交換するのだそうだ。「大体のネパール料理屋は知り合いだよ」とどこか自慢げでさえあった。

 異郷にあって故郷の言葉、味、人……「ふるさとを求める心」が蜘蛛の糸のようなネットワークをこの地に作っていく。孤独にこの店に辿り着いた私より余程、それは確かな強度と肌の温度を持っているように感じられた。頬張ったチキンセクワのスパイスがつんと胸に染みた。

 

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上のネパール料理の方がやはりオススメだそう