通〜ぶりズム

街を通ぶって歩く、通〜ぶりストたちによるブログです

迷子のカメお預かりしてマス 電柱

平日の昼下がり、あてもなくプラプラと裏通りを歩いている私たちの目に留まった店先の看板。ふと看板のしたに目をやると、虫かごの中に収まった亀が窮屈そうにガサゴソと動いていた。

「高円寺って、亀落ちてるのか」

時間がゆっくり流れているように感じられる高円寺、その街中を悠々と這う亀を想像する。

迷子の亀を預かっていたのはギャラリースペースの「たまごの工房」だった。亀を眺めていた私たちはそのまま流れるようにそのギャラリーへの階段を下って行った。
地下にあるそのギャラリーはこじんまりとした空間でもちろん窓もなく、そんな中に所狭しと作品が飾ってある。

「こんにちは」とニット帽をかぶったオーナーらしき女性が声をかけてくれた。お茶どうぞ、と氷の入った麦茶に歓迎のムードを感じ、安心する。芸術って人を選ぶから、初めて飛びこむ時はいつも緊張してしまう。ギャラリーの中の客はわたしたち二人だけだった。

「今は怪獣をテーマに展覧会しているんだけど、いつもは個展を開くアーティストのたまごのためにスペースを貸しているのよ」
だから「たまごの工房」と名付けたのか、と納得。高円寺にはそういう貸しギャラリーが多いらしい。高円寺なら、いつもは入りにくいギャラリーにも入れてしまう。緊張しつつも、アートをアマチュアなり楽しもうと思える。亀が堂々と街を歩ける高円寺、わたしもこの街では自由になれる。

「亀、落ちてたんですか?」と質問する。
「多分台風でどこかの庭から飛んできたのかなと思ってるのよ」
なるほど、先週末のひどい台風の影響がこんなところに…。それにしても店先に置かれ客寄せの亀みたいな扱われ方をしている。自由を奪われ、不本意そうに足をばたつかせる亀がやけに印象に残った。

 

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高円寺を我が物顔の亀