通〜ぶりズム

街を通ぶって歩く、通〜ぶりストたちによるブログです

「アイデンティティ」とは

イサム・ノグチというアーティストを知っていますか?
現在東京都美術館にて「イサム・ノグチ 発見の道 Isamu Noguchi: Ways of Discovery」(2021年4月24日〜8月29日)という彼の展覧会が行われている。恥ずかしながら私は、友人にこの展覧会に誘われて初めて彼の名前を知った。

 

イサム・ノグチ(1904-1988)とは独自の彫刻哲学を打ち立てた20世紀を代表する芸術家である。日本人の父とアメリカ人の母との間に生まれ、東西の間でアイデンティティの葛藤に苦しんだ。当時は「ハーフ」の子供は珍しく、日本では風貌から好奇の目に晒された。一方、第二次世界大戦中のアメリカでは真珠湾攻撃を機に日本人への嫌悪が増出し、彼自身も日系人強制収容所に勾留されたという経験がある。生まれた時から日米両国で受け入れられず、戦争を機に両親の祖国が敵対国となってしまったのだ。
彼の作品はそうしたアイデンティティの葛藤の中で、様々な文化が融合されて制作されたものだ。世界大戦を経験したことによる平和に対する祈念の作品も作られている。

 

イサム・ノグチが生きていた時代から数十年経った。しかし、残念ながら現代でも人種差別は問題になっている。海外ではBlack Lives Matterやアジア人ヘイトが問題になっているし、日本でも在日外国人やイサム・ノグチと同じく両親の国籍が異なる「ハーフ」への偏見は残ったままだ。

 

「発見の道」と題されたこの展覧会。彼自身がアイデンティティの葛藤の中で発見した彫刻のあり方を辿りながら、現代に生きる私も背筋が伸びる思いがした。
人種や国籍から真っ先に語られるのではなく、「その人自身」がしっかり見つめられる世の中になることを願いたい。

 

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出典:東京都美術館https://www.tobikan.jp/exhibition/2021_isamunoguchi.html