通〜ぶりズム

街を通ぶって歩く、通〜ぶりストたちによるブログです

空間の記憶

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9月、ポール・ルセサバギナ氏がテロ行為の疑いで逮捕された。映画「ホテル・ルワンダ」のモデルとなった元ホテル支配人である。1994年、ルワンダ虐殺真っただ中に避難民を救助した英雄として知られている。だが、逮捕に至る経緯は不透明な部分が多く、真相は闇の中だ。

 


日本から遥か1万km。東アフリカに位置する小さな国。この国には忘れてはいけない記憶がある。私たちが生まれる数年前、民族間で対立が起こった。たった100日間で80万以上の人々が虐殺されてしまった。

 

2月、私はルワンダにいた。
都市のキガリは、虐殺の歴史を全く感じさせないほど綺麗で整備が進んでいる。すれ違う子どもたちは元気に挨拶をしてくれた。

 

滞在4日目の雨の日。荒い運転のタクシーに乗り、“Kigali Genocide Memorial”に足を運んだ。

館内に入ると、ビデオ視聴室へ案内された。生き残った人々のリアルな話に、だんだんと引き込まれていった。

それから、展示室へ移る。
ルワンダの言葉とフランス語、英語で書かれていた文字は小さく、目で追うのに一苦労だ。しかし、それ以上に衝撃を与えたのはジェノサイド当時の写真だった。
血を流した人々が折り重なるように倒れている教会の写真は、今でも目に焼き付いている。
展示室は衝撃を与え続ける。
キガリで見つかった100個近くもの頭蓋骨や足、腕、鋤骨などの人骨。被害者が当時着ていた服。思わず一人でいられなくなり、友達に駆け寄った。なかでも、亡くなった人々の写真は何かを必死に訴えているようで、恐怖から鳥肌が立った。
人間が人間を殺すという行為の重みが嫌というほどに伝わってきた空間であった。

 

現代の子どもの中には、虐殺を信じない子もいるという。虐殺の爪痕を感じさせない都市で、悲劇を想像することは確かに困難である。
そんな子どもたちに、この空間は事実と向き合う時間を与えてくれると思った。過去の悲惨な歴史から目を背けないこと、そして記憶を伝え続けていくこと。それが、私たちの使命であると呼びかけているようであった。

 

“Kigali Genocide Memorial”を出て、タクシーを探す。雨は止み、雲の隙間からは光がさしていた。
ふと、空から「記憶のバトン」を渡された気がした。 
これを見た皆さんにも、バトンが渡っていたら嬉しい。